ファーハディアン|ギャッベ

遊牧民の暮らしから生まれたギャッベ

イラン語で「荒い」を意味する、イランの手織り絨毯「GABBEH(ギャッベ)」。もともとは実用を重視した絨毯で、イラン南西部でカシュクリ族、ロリ族などにより移牧しながらつくられ、移牧の際のベッドとして使われていました。

その魅力は何といっても、イランの自然をモチーフにした、独特の文様とカラー。手つむぎ糸を草木染で染色したナチュラルカラーと、植物や動物などを抽象化したモチーフは、シンプルでモダンな印象。日本のインテリアにも採り入れやすいデザインです。

2010年には、「ファールス州での織カーペットの伝統的な技術」として、ユネスコ世界無形文化遺産にも認定されています。

伝統を未来につなぐ、ファーハディアンの精神

ドイツでのペルシャ絨毯販売からスタートしたファーハディアン社。ギャッベ本来の魅力を生かしつつ、ペルシャ絨毯で培われた徹底的な品質管理や1999年設立の自社工場でのていねいな仕上げにこだわり、スイス、ドイツをメインマーケットにその商品価値を高めてきました。

1枚のギャッベが完成するまでには、たくさんの人がたずさわっています。その人たちの生活を守り、織の技術と文化を継承するためにすぐれた品質にこだわり続ける。それがファーハディアンの精神です。

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雄大な自然がはぐくむ、力強く、しなやかな素材

ファーハディアンのギャッベの原料となるのは、イラン南西部・クルディスタンで放牧されている羊から採れる、最高級の羊毛です。

直毛で脂質が多いイランの羊毛ですが、南西部に位置するザクロス山脈で放牧されている羊の毛は、日中と夜との寒暖差が大きい地域で飼育されるため、特に脂質が多いのが特徴です。また、放熱・保温性にもすぐれ、丈夫なことから、絨毯に最適な毛質です。

紡績された糸は天然染料を用い、伝統的な方法で染められます。しっかりと染め上げるために、24時間もの間、大きな窯で煮つづけるそう。染料はケレンデ・インディゴ(青)、アカネ(赤)、ザクロの皮や雑草(黄)、クルミの唐や木の皮(茶)、ジャシール(緑)など。これらを、独自の比率により配合しています。

繊細な手しごとが、ギャッベの品質を決める

織りを担う織工は、カシュガイ族・ロリ族などの女性たちです。職工たちは、渡されたデザインと糸を元に、1枚ずつ丹念に織り上げていきます。デザインの細かい部分は、織工たちが自らアレンジ。個性豊かな、世界で1枚だけのギャッベが生まれます。

織り上がったギャッベのうち、厳しい品質管理に合格したものだけが、テヘランのファーハディアン本社工場に集められます。その後、ギャッベは丹念に洗われることで、パイルの柔らかさと艶やかさが増します。乾燥後、シャーリングをかけ、表面の毛を均等に刈って滑らかに揃えます。これにより、柄がくっきり見えるようになります。

最後にギャッベの房を一度ほどき、ファーハディアン社のこだわりであるデザイン、色に合わせた縁の処理を行い、形を整えて完成。1枚のギャッベには、多くの人たちの技と想いが込められています。

デザインに込められた意味

イランの遊牧民の暮らしで育まれたギャッベの、色や柄(モチーフ)には、さまざまな意味が込められています。

色は、生命の循環をあらわすと言われ、赤は太陽の色、青はオアシス・水・空の色、黄は豊穣の景色、緑は春や夏に生い茂る草原の恵みをそれぞれ意味するそうです。

また、モチーフは、彼らの生活の中で生まれた形です。幾何学模様のほか、動物や植物も用いられ、それぞれに願いや祈りが込められています。たとえば、木は動物たちが清められ、祝福される「聖地」や「楽園」を意味します。また、邪悪なものを避ける魔除けとして、ライオンやオオカミなどの獣が描かれることもあります。

これらの色とモチーフの組み合わせで、魅力的で個性豊かなギャッベが生まれるのです。

ギャッベとのとっておきの出会いを

当店では、店主みずから定期的にイランを訪れ、ファーハディアン社のギャッベを直接買い付けています。産地に出向くことでより良質な、日本ではなかなか手に入らないめずらしい色柄のギャッベに出会えることもあります。また、イランの自然や風土、文化に直に触れることで、ギャッベの魅力を五感で感じることもできます。

そんな、心踊るようなギャッベとの出会いを、お客さまにお届けできればと思います。

永くお使いいただくために

「打ち込み、洗い」がしっかりなされたファーハディアンギャッベ。普段のお手入れは、掃除機をかけるだけで充分です。もし、お茶やジュースなどをこぼしたときは、すぐに固く絞った雑巾でやさしくたたくように、液体を吸い取ってください。

また、季節ごとにクリーニングに出す必要はありません。10年単位で汚れが目立つようであれば、絨毯専門のクリーニング業者をご紹介させていただきます。

使い込むほどに光沢が生まれ、色合いもよくなってくるのが、品質の良い絨毯の本来の姿です。年月を経て、少しずつ色が変化していくのをお楽しみください。